株式会社サンリオ様
顧客情報の一元化により、全ての顧客接点を跨いだ 「サンリオ体験」の実現
マーケティング本部ダイレクトコミュニケーション統括部
株式会社サンリオは、ソーシャル・コミュニケーション・ギフト商品をはじめ、グリーティングカード、音楽、映像、図書、ライブエンターテイメントなどを提供し、ハローキティ、マイメロディをはじめ、世界中で愛されるキャラクターを生み出してきました。
多数の店舗での購買、オンラインショップ、キャラクターのライセンス事業、そしてテーマパーク事業まで、そのビジネスは多岐にわたっています。
そうした中、課題として認識されていたのが、「顧客情報がシステムごとに分散され一元管理されておらず、顧客の情報を全体的に把握できていない」という事でした。店頭販売、オンラインEC、テーマパークなど複数の“会員”システムが並行して運用されていたことから、「サンリオファン」の顧客全体像が見えず、顧客ロイヤリティを高めるための情報として活かせていませんでした。
この課題を解決する第一歩として、サンリオはアプリ自体が会員証となり、サンリオの店舗やオンラインショップ、サンリオピューロランドでのお買い物や各種サービスをご利用の際にご提示いただき、ポイント“スマイル”がたまる新規会員アプリ「Sanrio+(サンリオプラス)」を開発し、2020年7月にリリースしました。
- 導入の目的
- ●ロイヤリティの高い『サンリオファン』の顧客動向を可視化し、サービス開発に繋げたい
●店舗、オンラインショップ、テーマパークを跨ぐ共通のポイントシステムを構築し、顧客に一貫した『サンリオのブランド体験』を提供し、更なる顧客ロイヤリティを高めたい
- 導入内容
- ●既存のシステムごとに異なる顧客IDの統合を、ゼロからの大規模開発をせずに実現
●店舗、オンラインショップ、テーマパークを跨ぐ共通のポイントシステム「Sanrio+(サンリオプラス)」として集約し、顧客情報の一元管理を実現
- 導入効果
- ●購買履歴や行動履歴の集約により、更なる「顧客理解」を深めることが可能になった
●お買い物や各種サービス利用でポイント“スマイル”をため、ギフトに交換をすることができるアプリ「Sanrio+」の導入により、顧客とのコミュニケーションの強化
や、更なるサンリオファンの育成に繋がった
お客様にとって価値がある顧客ID統合をデザインするために、顧客情報統合基盤として採用されたのが、プリズマティクスのAPIプラットフォーム『prismatix』です。本プロジェクトを企画から導入まで推進してきた、マーケティング本部ダイレクトコミュニケーション統括部部長の田口様に、「Sanrio+」リリースに至るまでの背景や導入内容、今後の展開まで詳しくお話を伺いました。
愛されるブランドを目指し、「サンリオファン」と接点を持つためのID統合
サンリオはこれまで、多岐にわたる顧客接点を創出してきました。約180店舗のショップ運営、オンラインショップ、ライセンス事業、サンリオピューロランドというテーマパークビジネスなどがその代表的なものです。コンテンツ力が非常に強いという企業の特性があったため、これまでは「いかに情報を発信していくか」のマネジメントに力が注がれてきました。しかし今後は、様々な接点で関わってくださるお客様をユニークに捉え、理解するための仕組みが必要であるという課題意識のもと、2018年にマーケティング部署が立ち上げられました。
「サンリオの商品は様々な小売店で購入できますから、わざわざサンリオの店舗やオンラインショップに来てお買い物されるお客様は、すごくロイヤリティの高い『サンリオファン』が多いです。子どもの頃から『いちご新聞』を読んでくださっていたお客様が、今日オンラインショップでグッズを買ってくださっているかもしれない。今日店舗にいらしたお客様は、毎年欠かさずサンリオピューロランドに足を運んでらっしゃる方かもしれない。そうと分かれば、お店としても接し方というのは変わってくるはずですよね。情報が統合されず、それが見えてこないのはとても勿体無いことだと考えていました」(田口様)
これまでサービスシステムの運営は、該当する部署ごとに別々に行ってきました。またテーマパーク運営に至っては別会社となっています。当然のことながら、ポイントシステムや顧客データベースなどがそれぞれ別でつくられ、運用されてきました。このポイントを共通に利用できることで、「顧客理解を深め、よりよいサービスを提供することができるサンリオの顧客ID統合」をデザインしたいと考えていました。
「ポイント連携をどうやって実現するか考えた時に、イメージとして頭にあったのは無印良品の『MUJIpassport』の仕組みです。すごく洗練されていると感じていました。そこで、株式会社良品計画で『MUJIpassport』の立ち上げなどマーケティング活動全般を技術面から支援した経歴のある、プリズマティクスの濱野社長にご相談したのがご支援いただくことになったきっかけです。ご相談したその場で、ササッと構想の核になるような一枚絵を描いてくれ、その中心にあったキーワードが『スマイル』。“スマイル”と“マイル”をかけたんだ、と仰っていましたね(笑)」(田口様)
店頭やEC、サンリオピューロランドなどでためた“スマイル”ポイントを、“ギフト”に交換するなどお客様が『サンリオ体験』深め、広めることができる。そしてサンリオとしても、お客様一人一人を理解することができるようになる。この両面を実現するための構想が「Sanrio+」の土台となりました。
既存システムを活かした開発をするため、『prismatix』の基盤を採用
本プロジェクトにおいては、サービス設計やそれに伴うシステム設計は、プリズマティクスが担当しました。既存の各ECシステムをつくったシステムベンダーや、POSメーカーにもプロジェクトに入ってもらい、直接どのように連携するか相談しながらの開発となりました。「『prismatix』を選択した一番大きな理由は、柔軟なAPIで既存システムを“連携”することが可能な仕組みだったという点です。各システムが分断されてつくられてきた経緯の中で、顧客統合を行うにしても、全部最初から統一基盤として作り直すというのは現実的ではなかった。今あるシステムを生かしたままひとつの体験をつくる、ということを理想的に実現してくれそうな仕組みが『prismatix』のAPI連携でした」(田口様)
組織も仕組みも縦割りとなっている状況から、組織横断型のID統合プロジェクトがスタートしました。組織が分断されているということは、システムだけで無く、その事業に関わる“人”も分断されているということ。部署ごとの利害関係などを超えた、全社的な連携が必須となる初めてのプロジェクトであったことは、サンリオとしても画期的な機会であった。
「プリズマティクスさんや開発会社の方々、そしてサンリオが二人三脚となって、開発を進めることができたと思っています。みなさん、発注者と受注者という立場を超えて、単に言われたことを作るだけではなく『こんなのがあったらいいよね』ということを本当に一緒に考えてくださった。パートナーとして素晴らしい良い関係が築けた。
それがプロジェクト成功へと繋がっているなと感じています」(田口様)
「サンリオ+」を媒介に、ファンとのコミュニケーションが生まれる
2020年7月に「サンリオ+」をリリースした後、店頭での会員証移行を軸に移行を進めてきました。従来店舗で発行していたポイントカードを、“スマイル”ポイントをためる事ができる「サンリオ+」のアプリや「Sanrio+仮カード」など、段階的に移行できるようご案内しました。リリースから僅か3ヶ月後の10月上期で60万人近くのIDが統合されるという結果に、田口様も驚いたと言います。
「サンリオのメインのお客様層というのは、ITにそんなにお詳しくない方も多い。お孫さんのためにギフトをご購入頂くような方もいらっしゃって、年齢層も幅広いです。社内で議論を重ねた結果、店頭でのご購入時に『サンリオ+』アプリにご入会頂くのが難しい方には紙製の「Sanrio+仮カード」にポイントを付与して発行します。ポイントの有効期限は3ヶ月、その間に会員登録をしてアプリに入れて頂くというフローでのご案内をしています」(鈴木様)
「サンリオ+」は、サンリオファンにどのように受け入れられているのか、「サンリオ+」の一番好きな点はどこかという選択肢型のアンケートを会員から取ってみたところ、第1位となった点は「好きなキャラクターを会員証に設定することができる」という機能だったそうです。「賞品が安く買えるクーポンが貰える」「貯めたポイントを景品と交換できる」などの項目を抜いたこのアンケート結果は、サンリオファンならではのものではないでしょうか。
「このキャラクター付の会員証画面は、会計時にスキャンのためにご提示いただきます。その際に店頭スタッフがキャラクターを見て『私と同じキャラクターを会員証にしてるんですね!』とお声かけし、お客様とのお話が弾みましたという報告も貰っています。売上が伸びたとか、来店者数が増えたというような数値的な話ももちろん大事ですが、サンリオという会社のビジネスの上では、お客様とスタッフの触れ合いというのもすごく大切なことだと考えていますので、嬉しいエピソードでしたね」(田口様)
2020年8月には、既存のポイント制度である「サンリオフレンドシップクラブ」終了に伴い、その一部の景品を「サンリオ+の」“スマイル”ポイントでお得に交換できるキャンペーンを行いました。交換された“スマイル”ポイントが最も多かった店舗には賞状と、副賞として“お菓子”を用意。すると、このキャンペーンに対する店舗スタッフの気持ちも盛り上がり、ポイントの交換量は目に見えて多くなったそうです。
「用意したのは、たいしたお菓子じゃ無いんですよ。でも、優勝したチームはやはり嬉しいものですよね。そして何より、このようなスタッフの熱量に触れたお客さまが、楽しい、嬉しい気持ちになってくださる。こういう成功体験を経て、アプリ導入当初は『アプリ移行は面倒だな』『クレームが増えるかもしれない』などいろんな不安があった店頭スタッフ達も、今は楽しんでアプリを紹介してくれているようです」(田口様)
顧客統合をスタート地点とし、データを活用したサンリオの今後の取り組み
コロナ禍にリリースした「サンリオ+」は、1年以上が経過した現在、90万人以上の登録者数となっています(※2021年8月インタビュー時点)。そのうち約30万人のユーザーが月に1回以上のアクセスがあるアクティブユーザベースだといいます。今まで漠然としていたユーザー数が具体的に数として見えるようになったことは、販売業務を行っている社員にとっても大きな変化となりました。
「このデータを使うとこんなこともできるんですよ、と提示してみると、これまで考えもしなかったようなアイディアが社内で色々生まれて来はじめています。これは嬉しい変化ですね。コロナ禍で物販は非常に厳しい状況ですが、データを利用することで『なにか新しいことがやれるかもしれない』という希望にも繋がっています」(田口様)
サンリオは2020年に創業来初の社長交代があるなど、変化の機運が高まっています。今年の5月に発表した3カ年の中期経営計画書でも『デジタルプラットフォーム上での露出を増やし、グローバルに顧客接点を拡大』を謳っており、今後デジタル施策にますます力を入れ、進展し、進化するサンリオ。
「素晴らしいキャラクターといい商品を作ることは大前提ですが、現代は『いいものを作って情報を出していけば物は売れる』という時代ではありません。データからお客様のことを理解するのはもちろん、お客さまに喜んで頂けるような商品・サービスを開発して提供するため、サンリオ全社のビジネス基盤として実現していきたい。そうすることで、もっとサンリオのキャラクターや商品は受け入れられ、愛されるブランドになれるポテンシャルがあるだろうと考えています。(田口様)
オムニチャネルやユニファイドコマースといった小売業の潮流も変化し、一人一人の属性や購買・購買履歴に基づいた、パーソナライズされ、かつシームレスな購買体験などが今後求められていく昨今。サンリオもそういった顧客接点の拡大のための施策を視野にいれている。プリズマティクスは今後も技術力やコンサルティング支援を通して、サンリオが目指すビジネス基盤の実現を目指して参ります。
マーケティング本部 ダイレクトコミュニケーション統括部部長 チーフデジタルオフィサー(CDO) 田口歩様
マーケティング本部 ダイレクトコミュニケーション統括部CRM推進課 シニアマネージャー 鈴木理恵様
- 会社情報
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会社名:株式会社サンリオ
本社所在地:東京都品川区大崎1-11-1 ゲートシティ大崎(ウエストタワー14F)
設立:1960年8月10日
従業員数:646名(嘱託・アルバイト等を除く 2021年3月31日現在)
主な事業:ソーシャル・コミュニケーション・ギフト商品の企画・販売、グリーティングカードの企画・販売、出版物の企画・販売、レストランの運営、映画の製作・配給・興行、ビデオソフトの製作・販売、ライブエンターテイメントの企画・公演、著作権の許諾、テーマパーク事業