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株式会社良品計画

顧客のニーズに対応するAPI基盤構築と統一した顧客体験の提供

株式会社良品計画

EC/OMO会員基盤

1989年に設立した良品計画は、「無印良品」の企画開発から、商品調達、流通・販売までを行う製造小売業です。他にも「Café&Meal MUJI」「IDÉE」の展開、キャンプ場の運営などを行っています。 「無印良品」は、1980年12月、西友ストアー(現:合同会社西友)のプライベートブランドとして約40品目でデビューし、現在では約7,500品目、店舗は日本を含む32の国・地域へと広がっています。 その無印良品は、2013年にスマホアプリ「MUJI passport」を導入し、実店舗とECサイトを横断した顧客とのコミュニケーションを実現しました。その後、オンライン・オフラインやデバイスに依存せず、統一された顧客体験を更に提供するため、API基盤の構築、ECサイトの再構築など、現在に至るまで漸次開発を行っています。

APIベースの顧客体験基盤の構築へ

無印良品では、2013年にスマホアプリ「MUJI passport」の立ち上げを行いました。

MUJI passportは、無印良品でのお買い物や、チェックインなどの行動、また、各種サービス利用により「MUJIマイル」が貯まり、マイルが一定貯まるとお買い物で使える「MUJIショッピングポイント」をはじめとした特典がもらえるサービスとなります。アプリ上で、お会計の際に提示する会員証や、各店舗の商品・在庫検索、最新の情報をお届けするfrom MUJIなどの機能を提供しています。

一方、ECサイトである「無印良品ネットストア」は年々成長を続け、2015年には、お客様が店舗のお買い物に行く前にネットストアで商品・在庫をチェックしたり、ネットストアで注文し、自宅ではなく店舗で商品受け取りを行うなど、ネットストアと実店舗が相互補完する関係となっていました。

これらを背景として、2015年時点で良品計画として下記三つの課題を感じていました。
一つ目の課題は、インフラの拡張性でした。当時はデータセンターにサーバーを設置するオンプレミス形態でシステムを運用しており、ネットストア成長に伴う継続的なアクセス増、及びアプリのプッシュ通知によるスパイクアクセスにより、性能問題が顕在化し、インフラ拡張性の確保は待ったなしの状況でした。

二つ目の課題は、オンライン・オフライン、デバイス、利用サービスを問わず、統一された顧客体験をどう提供していくかでした。MUJI passportのようなお客様とのコミュニケーションであれ、ネットストアや実店舗の購買体験であれ、シームレスに繋げていく必要性を強く感じていました。

三つ目の課題は、海外販社でも日本と同様のサービスをどうやって提供するかでした。GDPRや会計制度、各国システムの違いがありながらも、それらに対応した仕組みをガバナンスの効いた統一基盤で提供できるようにしたい、と考えていました。

これらの課題の解決策として、オンライン・オフライン、デバイス、利用サービスに依存せず、各国の違いを考慮したカスタマイズが適用できるアーキテクチャとして、お客様とのコミュニケーションや購買の”ハブ”となる「API基盤の構築」がクラウドベースで進められることになりました。

しかしながら、現在でこそ”マイクロサービス”や”ヘッドレスコマース”といったAPI基盤の考え方や”クラウド”利用は一般的になりつつありますが、当時はAPI基盤自体まだ新しい概念であり、クラウド活用も途上で、それを事業会社単体で構築するにはノウハウや技術力、体制構築が不安視されていました。

これに対し、当時からクラウド活用やIT技術力について定評のあったクラスメソッド株式会社と、その子会社であるプリズマティクス株式会社がAPI基盤の開発パートナーとして支援を行うこととなりました。

API基盤への段階的な移行

API基盤の導入により、オンライン・オフライン、基幹システム・会計などの各システムを横断した機能の活用が容易になりました。具体例として、スマホアプリ・ネットストアにおけるシームレスな体験、在庫引当のリアルタイム基幹連携、海外横展開が挙げられます。

スマホアプリ「MUJI passport」では、アプリネイティブ画面と、ブラウザーベースのWebView画面(ブラウザーで表示できるHTMLをアプリ内でも表示できるようにする部品)が混在して動作しています。

アプリネイティブ画面はAPIを介してデータのやり取りを行い、WebView画面はアプリの中でネットストアなどのWeb画面を表示し、そのWeb画面を介してデータのやり取りを行います。これを統一した体験で提供するためには、APIであれ画面であれ同じデータを提供し、双方で認証認可(ログイン)情報を引き継ぐことができなくてはなりません。

API基盤を通じて同じデータをアプリネイティブ画面とWeb画面に提供し、共通した認証認可のAPIを用いることで、例えばアプリネイティブのお気に入り画面でカートに追加した商品を、WebView画面内のカート・ご注文手続き画面でシームレスにお買い物を完了させることが実現できています。

このご注文手続き画面では、商品の種類に応じ、全国にある倉庫や工場、協力会社のリアルタイムな在庫状態に応じて、商品の引き当てを行っています。APIによって基幹システムやネットストアなど偏在する在庫情報をリアルタイムに参照・更新できる構造になっており、複雑な引当処理を実現しているにも関わらず、お客様側から見るとシンプルな一画面の体験で実現できています。

以上のような仕組みは、マイクロサービス化されたAPI基盤がAmazon Web Servicesの上に構築されています。これにより、コンテナ技術を用いた性能拡張が容易となり、また、海外展開する際も環境のコピーした上で、その上に構築された画面や機能を、GDPR、各国の法律や会計、商習慣に合わせて調整することが容易になりました。

今後の展開

API基盤を用いたシステム連携や業務支援、新しいサービスの実現は着実に歩みを進めています。

良品計画の中期経営計画(https://ryohin-keikaku.jp/balance/pdf/210721_management_plan.pdf)では、2021年8月期における国内外の売上高4,900億円・EC比率10%(見通し)を、2024年8月期における国内外の売上高7,500億円・EC比率を15%(計画)に高めようとしています。この数字を達成するにあたり、API基盤の拡張性・柔軟性は重要な役割を果たしていくと考えています。

API基盤によって柔軟にシステム連携が行えるようになった一方、各システムを横断して一貫した体験を提供するためには、システム要件だけではなく、業務要件を部門横断でしっかりと詰める必要があり、これまで以上にシステム観点での技術力・設計力はもちろんのこと、業務観点での要件定義力・設計力がこれまで以上に求められています。

良品計画側での業務担当者と、プリズマティクスが一体となって、新サービスの実現を目指して参ります。

最後に

株式会社良品計画では業務改善や新サービスを更に進めていくための人材を募集されています。
事業会社でマイクロサービスやAPIを用いて先進的な開発や運用を推進するのにご興味ある方はご覧ください。

株式会社良品計画「キャリア採用のページ」 https://careers.muji.com/jp/career/recruitment/

会社情報
会社名:株式会社良品計画
所在地:〒170-8424 東京都豊島区東池袋四丁目26番3号
設立:1989年6月(登記上1979年5月)
従業員数:18,163名 (臨時従業員等 9,281名を含む/良品計画グループ)※2021年8月期
国内店舗数:国内合計497店舗(Café&Meal MUJI、IDÉE含む)
主な事業:「無印良品」を中心とした専門店事業の運営/商品企画/開発/製造/卸しおよび販売