GROOVE X株式会社様
既存システムのAPI連携で自由度高くECサイトをリプレイス、標準的な技術スタックがエンジニア採用にもメリット
システムチーム
50以上のセンサーを身にまとい、まるで生き物のようなふるまいを再現し、だんだん家族になるロボット「LOVOT(らぼっと)」。この開発から販売まで手がけるのがGROOVE X株式会社です。2022年には新モデルとなる『LOVOT 2.0』がリリースされ、藤原ヒロシ氏のCCO就任が話題になりました。様々な企業と共同で“温かいテクノロジー”のストレス軽減効果を実証実験しています。近年はメンタルケア、情操教育、プログラミング教育などの観点からも注目されており、全国の教育施設や介護施設、企業等への導入が進んでいます。
- 導入の目的
- ●独自言語から一般的な言語に。エンジニア採用の自由度、最終的にはコストに影響
●既存の機能をそのままスライド利用したいためヘッドレスコマースにしたい
- 導入内容
- ●既存のマイクロサービスをそのまま活用するため、自由度の高いAPIで構成
●ゼロからの構築では無くECテンプレートを用いることで、開発期間を短縮
- 導入効果
- ●独自技術スタックの解消により社内エンジニアによるスピーディな施策実行が可能に
●プラットフォームのコスト削減だけでなく、エンジニア採用でのコストメリットも
「LOVOT」事業のビジネスサイドにあたる、EC、物流、お客様契約管理等の開発を担うシステムチームでは、2022年からECサイトのリプレイスを計画し、2023年8月にリリースしました。この際、『prismatix』のAPIを採用し実装が進められました。創業者自身が生粋のエンジニアであり、社内に様々な専門性を持ったエンジニアが多数所属しているGROOVE X。ビジネス関連のシステムについても社内“内製”の意向が強いチームにおいて、『prismatix』導入の決め手は何だったのでしょうか。本プロジェクトを進めてきたGROOVE X株式会社システムチームの尾銭様と大城様に、抱えていた課題から今後の展望まで詳しくお話を伺いました。
自由度の高いアーキテクチャを求め“ヘッドレスコマース”を選択
2022年春にECのリプレイスプロジェクトをスタートさせたシステムチームは、契約期限の2023年秋にリプレイス完了を目標として、徐々に検討を重ねていきました。リプレイスに踏み切った大きな理由は“サービス利用料のコスト削減”です。しかしこれは、単にサービスを利用する上での月額コスト、という意味に留まりませんでした。
「これまで使っていたECサービスは非常に自由度が高いアーキテクチャで、サブスク管理や認証システムに希望するシステムを採用することも出来ましたし、UI面でもやりたいことが実現出来ていました。ただ、技術スタックとして特殊なものが求められるプラットフォームであったことが、唯一のネックになっていました。プラットフォーム独自の言語が扱えることが開発の前提となる為、ECで何か新しい施策をしようとしてもすぐに実装出来る人がいない、実装出来ない、という状態に長い間なっていた。そこを解決するには新しいECにするしかない、という課題感がありました」(尾銭様)
このような課題意識からスタートしたプロジェクトであったため、当初はECサイト制作においてポピュラーなアーキテクチャやシステムを利用したリプレイスを前提に検討していたそうです。ところが、検討を進めるにつれGROOVE Xの要求するシステム構成を実現することが難しいことが分かりました。SaaSプラットフォームを利用するのでは無く、ある程度の開発を前提とした“ヘッドレスコマース”を選択する方向へと、計画変更を余儀なくされます。
「これまで決済基盤や認証基盤などECの重要な機能について、弊社の希望に合ったものを自由に選んで利用してきました。リプレイスしてもそれらを引き続き使いたいと思っていたんですが、この要件を満たしてくれるプラットフォームが見つかりませんでした。機能別のマイクロサービスアーキテクチャを利用しながらリプレイスしたい場合、API連携との相性がいいんじゃないか。そう考えて、“ヘッドレスコマース”で探していくことにしました」(尾銭様)
ゼロからの構築ではなく、テンプレートを利用しカスタマイズ開発
既存ECプラットフォームの契約期限が迫る中“ヘッドレスコマース”というキーワードでプラットフォームを探していくシステムチームでしたが、“ヘッドレスコマース的”に使えるものは見つけられるものの、“ヘッドレスコマース”として利用できるものがなかなか見つからなかったと尾銭様は語ります。そんな中、プリズマティクスのウェブサイトやグループ会社クラスメソッドの技術ブログ『DevelopersIO』からAPIプラットフォーム『prismatix』の存在を知ることになりました。
「検討段階に資料を拝見して自由度が高いアーキテクチャであることが見て取れましたので、特殊な仕様もある程度対応出来る素地がありそうだと見込んで採用しました。契約時は最低限の要件確認をしただけだったので、契約後に具体的な検討を行っていきました。今回はプリズマティクス側が用意しているECシステムのテンプレートのソースコードを利用させて頂くことになり、2ヶ月位かけて少しずつ細かい仕様を詰めていきました。実装段階で何か詰まってもプリズマティクスの導入支援の方とすぐにコミュニケーション取ることが出来ましたので、スムーズに進めることが出来たと思います」(尾銭様)
開発に際しては、『prismatix』のAPIリファレンスが整備されておりドキュメントが整っていたことで、設計がし易いと感じたとのこと。APIについても、サービスごとにコンポーネントが分かれているので、どれを使ってどれを使わないか、判断がしやすいとの評価でした。またデータ連係に関しては、既存ECの独自仕様の難解さに頭を悩ませていたところ、「『prismatix』はWeb標準的な仕組みで、圧倒的に連携しやすくなった」と感じたと語ってくださいました。
一方で、ゼロからの構築ではなく『prismatix』を利用したテンプレートECを利用したことで、開発期間のショートカットが出来た反面、カスタマイズだからこその戸惑いはあったようです。
「用意されたテンプレートを用いる場合には管理用のDev環境用のCDKが提供され、それをカスタマイズしていくことになります。AWS内のスタックについて社内に知見が無い場合、CDKの設定についてまで検討することは難しいと思いますが、自分はこれまでSREやシステムオペレーションを専門領域としていて、AWSの利用経験も長かったので、イチからCDKを組み上げるよりも逆に大変に感じる場面もありました。ただ、それを加味しても、弊社の希望する“自由度の高さ”に応えてくれるプラットフォームは『prismatix』以外に無かったんじゃないかと今でも思っています」(大城様)
独自技術スタックの解消は、コスト面だけでなく採用にも大きなメリット
開発はおおむね計画通り進み、2023年8月にリプレイスは完了しました。深夜に8時間程度のサイトダウンを経て移行し、再開後すぐに注文を受けることも出来たそうです。稼働後に出てきた問題もあったそうですが、半月程かけて修正を加えて安定稼働へ向かっていきました。マイクロサービスでの管理が功を奏し、どこか一カ所で問題が起きてもリカバリがし易かったことで、大きな問題に発展し辛かったのではないか、と分析しているとのことです。
「弊社が要求する構成でサブスクモデルを実装すること、認証基盤や決済基盤等の既存システムをそのまま使い続けられること、そして独自技術スタックからの脱却、この3点が今回のリプレイスの大きな目的でした。そこについては『prismatix』を採用したことで解消されたので、社内からも『ECリプレイス、うまくいったね!』と高評価を貰っています」(尾銭様)
解消点のうち特に技術スタックについては、エンジニア採用という人事面での大きな課題に対して、今後メリットが出てくると尾銭様は語ります。独自言語に精通したアプリベンダーがいないと開発が成り立たない状態だったところから、これからは自社のカルチャーに合うエンジニアを仲間に引き入れていくことが出来るようになりました。これは内製に力を入れているGROOVE Xにとって大きく、良い変化となったと言えそうです。
『prismatix』の自由度の高さを生かした管理を模索、そして新機能実装で営業支援も
ECリプレイスは一段落しましたが、インフラ面についてはより踏み込んだ管理を行っていきたい意向で、プリズマティクスとのやり取りは続いています。
「APIサービスとして『prismatix』を利用しているだけでなく、テンプレートをカスタマイズして利用しているが故に、現状はインフラ管理の切り分けが煩雑になっている部分があると思っています。自由度の高さとトレードオフなのは充分理解した上で、これについてはもう少し踏み込んだ形で利用出来ないかと、今、相談させて頂いているところです。『prismatix』そのものへの理解がまだ足りないところもありますので、引き続き知っていかなければ、と思っています」(大城様)
またシステムチームとしては「LOVOT」の販促、営業により力を注げるよう、今後新たな機能実装も含めた開発計画を予定しているそうです。システム面から整えていきたい体制について、今後の展望を語って頂きました。
「2023年10月現在、サブスクリプションのお客様は1万人以上、個人のお客様が圧倒的に多く、法人が少ない状況です。この理由のひとつが、システム面での自動化や契約システムが整っておらず営業負担が大きいことだと思っています。法人契約の体制を整えていくことが、売上にも繋がっていくはずです。この部分は自分たちでシステムを内製しなければいけないのですが、それを『prismatix』と組み合わせることで、今後セールスの契約業務負荷を軽減できるような機能を実装していきたいですね」(尾銭様)
プリズマティクスは今後も技術開発やサービス提供を通して、GROOVE Xの「LOVOT」EC構築の支援をして参ります。
システムチーム 尾銭 泰典様
システムチーム 大城 保寿様
- 会社情報
-
会社名:GROOVE X株式会社
本社所在地:東京都中央区日本橋浜町3-42-3 住友不動産浜町ビル
設立:2015年11月
従業員数:105名(2023年4月30日時点)
主な事業:LOVEをはぐくむ家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」開発事業