アンファー株式会社様
複数チャネルかつ、複数購入フローのECを統合、未来を見据えた開発体制を整える
アンファー株式会社 システム開発本部 システム課
“スカルプD”で、頭皮ケアシャンプー市場を確立させたアンファー株式会社は、現代日本人の健康と美容における様々な課題を、「医療 × サービス」の市場を切り拓き続けている企業です。信頼できるドクターとのネットワークと顧客からの生の声を生かした、スピード感あるものづくりを実現してきました。
- 導入の目的
- ●利用していたECサイトのパッケージサービスが事業撤退することになり、リプレイスが必要になった
●自由度が高いパッケージサービスを利用していたが、運用負荷が高くなっていた課題があった
●BtoC、BtoB、複数のチャネルごとに管理されていたシステムを一つの基盤に統一したかった
- 導入内容
- ● 業務処理システム、各ECサイト、コールセンター、会計システムなどを結びつける基盤として、APIプラットフォーム『prismatix』を採用
- 開発体制の変化
- ●各システムを統合した基盤『prismatix』の導入により、部署横断で開発プロジェクトを進めることができ、活用社員による自社システムへの理解が深まった。
●今後のシステム改修時や設計変更時に、システム開発会社に丸投げするのではなく、自社で主体的に進めることが可能となった。
アンファーは、2020年6月にECサイトのリプレイスを行いました。その際に採用されたのがAPIプラットフォーム『prismatix』です。本プロジェクトを進めてきた執行役員、システム開発本部 本部長の村上様に、課題や今後の展開まで、お話を伺いました。
拡張性が高く、運用負荷の低いEC統合基盤として『prismatix』を採用
アンファーが従来運営してきたECサイトは、自由度が高いパッケージサービスを利用運営してきましたが、自由度の高さからかえって運用負荷が高くなってしまうのが課題となっていました。このパッケージが利用できなくなることになり、リプレイスが余儀なくされたタイミングで、新しいシステムの模索が始まりました。
「アンファーは、個人ユーザー向けにはECサイトから注文を受付ており、またコールセンターの受話でも受注しています。お客様から注文があった場合、医薬品の場合はまず問診票を起票する必要があります。その後、薬剤師による確認での承認を経て初めて、注文が受け付けられるという特殊な購入フローとなっています。一般的な通信販売フローではないBtoCに加え、BtoBの卸売システムも同じ基盤にのせたいという希望がありました」(村上様)
このような構想を考えていた時、知り合いの企業からプリズマティクスについて紹介があり、APIプラットフォーム『prismatix』を利用すれば希望していた設計が実現できるということがわかり、基盤としての採用が決まりました。
今後の改修や機能追加などを見据え、社員体制を模索
業務処理システム、ECサイト、コールセンター、会計システムなどの運用システム開発に5社、更に『prismatix』基盤開発としてリヴァンプ社とプリズマティクスが加わり、合計7社が関わる大規模な開発プロジェクトとなりました。
プリズマティクスは基盤提供だけでなく、プロジェクトマネジメント並びにコンサルティングとしてプロジェクトを支援。業務フローの洗い出しや要件定義における開発支援はもちろん、アンファーの方々と一緒に、アンファーの視点に立って、外部連携サービスや利用パッケージ選定、RFPの書き起こしもなども行いました。
「本プロジェクトでは、開発会社に任せきりにせずシステムを社内で把握することを重要視しました。どの部分が自社システムでどこまでが『prismatix』の機能なのか、どのような機能をどのシステムが担っているのかなど、仕組みを理解するのは大変なところもありましたが、システム会社出身の人材を中途でプロジェクトメンバーに採用するなどして理解に努めました。この結果、設計段階にはかなり踏み込んで開発を進めることができました」(村上様)
社員全員がITについて理解を深め、自ら提案できる体制づくりに
APIプラットフォーム『prismatix』を利用しシステムの理解が深まることで、自由にアーキテクチャ組むことが出来るようになり、また改修要望などについても、今後はベンダーへ的確な要望を伝えられるようになります。
現段階ではシステム部門のメンバーがシステム把握と設計についての要望を伝えていますが、今後はEC部門や倉庫部門など、事業部の担当自らがシステムの理解を深めることも進めていくつもりとのことです。(久我様)
「さまざまな視点が加われば議論が活発化したり、『コレとコレは連携の可能性があるから、ちょっと考慮したつくりにしよう』という、先を見据えた工夫ができるようになります。『prismatix』を採用したメリットは、まさにここにあると考えています。
システムが分からなければ、自分たちの業務効率化も出来ませんし、アイデアも出せない。スピード感を持って事業を進ませるためにも、ITの知識や理解をシステム部門だけに求めるのではなく、社員全員がITについて理解していることが当たり前にしていきたいですね」(久我様)
プリズマティクスは今後も業務担当者と共に、アンファーの目指す業務効率化、またDX化の実現を目指して参ります。
執行役員 システム開発本部 本部長 村上 貴之様
対談:アンファー 村上様 × プリズマティクス アドバイザー逸見
アンファーのEC統合基盤に『prismatix』を採用頂いたことをきっかけに、当社エンゲージメント・コマース・アドバイザーメンバーである逸見とアンファー株式会社 執行役員、システム開発本部本部長 の村上様との対談が実現しました。逸見は、三省堂書店、セブンネットショッピングの立ち上げ、アマゾンジャパンBooksMD、イオンにてネットスーパー立ち上げとデジタルビジネス戦略担当、カメラのキタムラ執行役員EC事業部長としてオムニチャネル化推進など、20年以上の小売経験と1999年以来のEコマース経験があり、現在は知見を生かし様々な企業のコンサルタントも行っています。ネット販売や小売システムの構築を促進してきた経験から、小売業のEC、DX、効率化、自動化などにおける課題や展望について、アンファー村上様にお話を伺いました。
医薬品を取扱うECサイトならではの、難しさと取り組み
逸見:アンファーさんのことは2016年位から知っていたのですが、『prismatix』を採用頂いた後、セットのSCALP D NEXT ORGANIC5シャンプーとDISM洗顔フォーム、追加でSCALP Dコンディショナーを購入させて頂きました。お世辞ではなくて、快適に使っているので、今あるものが切れたら定期購入に切り替えるつもりです。今は出張先に持っていくためにどうしたらいいか悩んでいます(笑)。
今回のリニューアルで、アンファーさんは一般的に言われる操作性の良さ、必要な表示など基本ラインを整えることはもちろん、薬機法などの法律面まで含めて、しっかり取り組んでいらっしゃるなと感じました。実はこういう当たり前なことを“ちゃんと”やるのは難しくて、各社でもなかなか出来ない、進められないのが実際のところだと思います。
村上:医薬品をネット上で取り扱うにあたっては、我々もこれまでには色々な経験をしてきて、知識不足を痛感して関係各所に実際に足を運び、質問したりもしました。一般的な小売とは違って、分かりにくく難しいなど、色々なルールがあります。例えば、販売と倉庫が一緒になっていなければならないとか。誰も買いに行かないような場所にあっても、いつでも購入できるようにしなければいけないなどといったことです。
逸見:とはいえ法律なので、事業をする上では守らなければいけない。そういう様々な難しさもあって、ドラッグストアはスーパーと比べて、このコロナ禍でもECが遅れてしまっているのが現状だと思います。ドラッグストアから「オムニチャネルをやりたい」という相談は何度も受けてきましたが、まずECをやるのに必須の「単品管理」が全然できていないことが多いのです。未だにFAX発注が多く、EDI(電子データ交換)発注はしていない。在庫がケースなのか単品なのか把握しきれてない、という状況。「その状態でのECは絶対止めましょう」とお伝えしていました。
村上:弊社も今回のリニューアルでEDIを入れました。元々はFAXで注文を受けていたのですが、今はEDIで対応できるところは切り替えています。でもやはり、店舗からの注文をEDIにするのは難しくて、FAXが残ってしまっていますね。
逸見:自分も前職キタムラ時代にEDIを導入しましたが、どうしてもFAX受注は残ってしまっていました。しかしながら大きなお取引先はEDI発注に対応しているので、社数で数えると半分でも、取り扱い金額で見ると8割位がEDIになり、充分メリットはありました。EDIにするかFAXにするか、というような二元論で話をされる会社さんが多い中、アンファーさんがどちらも対応されているのは印象的でした。
村上:そこは本当に苦労したところです。
『prismatix』導入により、業務フロー見直すチャンスに
逸見:EDI導入などをきっかけに業務の自動化が進めば、スタッフは利益を上げる仕事に注力出来ます。売れた数と在庫数をベースに商品SKU数や在庫/発注ステータスを管理することが出来れば、在庫数が今の売上や倉庫の大きさに対して適正なのか余剰なのかが分かります。また毎日の現場業務の中で後回しになりがちな返品とかキャンセル品対応についても、リアルタイムに近い形で把握することが出来るようになりますよね。
村上:返品は本当に色々なパターンがありますよね。倉庫に戻すパターン、会社に戻すパターンなど……。プロジェクトの最初にメンバーに返品パターンを聞いておいたのですが、現場メンバーも全てを把握できていなくて「やっぱりこういうパターンもありました」というイレギュラーパターンがしょっちゅう追加されてしまいました。ある面では非常に自由に柔軟に対応できていた、とも言えるのですが……。
逸見:臨機応変に自由にやっていた現場の動きは、ある意味でそれが一番早いからやっているわけでしょうから、取り入れるべきではあります。ただ、それを、“イレギュラー”としてしまうとチェックポイントが減り、ヒューマンエラーも起こりやすく棚卸でのズレも起きやすい。だから“レギュラー”としてフローの中に取り込んでやるべきものなのですよね。システムのリプレース時に必ず取り組む事は、現業の業務フローをしっかり見直し、あるべき姿を描くことだと思います。
村上:最初に言っておいてくれれば入れておいたのに、という要件もあって、リプレース後に既に何度か改修を加えています。ただ、これはずっと続いていくことなのかなとは思っています。僕らが要件定義して、ある程度仕組みをわかっていて、その上で「これを作ってください」と開発ベンダーさんにお話しする。『prismatix』は、それがやり易い仕組みだと思っています。
逸見:コンサル先でも、「今はシステムが昔ほど単純ではなくなっていますし、業務内容を理解していないと設計は出来ないので、ベンダーさんに“丸投げ”はできませんよ」と正直にお伝えしています。プログラミング言語までは知らなくてもいいのですが、ある程度、システムの仕組み、処理の流れぐらいはちゃんと知っておきましょう、ということです。
村上:ずっと当たり前のようにパッケージ商品を使ってきて、「ベンダーさんに言えばやっておいてくれる」という意識だったわけですが、『prismatix』に切り替えた後は、自分達で考えて何を作って欲しいのか、ちゃんと指示することが必要になりました。
今でこそようやくその意識が浸透してきましたが、切り替え直後はまだまだ認識が甘かったですね。システム側も現場の話をいくら聞いても理解できなかったし、現場の人たちも業務フローを整理できていなくて、ミーティングの度にイレギュラーな業務パターンを追加で伝えられたりと、コミュニケーションが物凄くたくさん必要でした。
逸見:当初の社内コミュニケーションは本当に大変ですけど、そこを端折っちゃうと絶対に後で手戻りが多数発生しますよね。そして数年後には後悔することも。今回は大変だったかもしれませんが、次のリプレースからは要件の整理も早くなっていくでしょうし、やり方にも慣れて早くなっていきます。業務サイドも「フローの中のここの業務と仕組みを入れ替えましょう」という話が出来るようになります。
村上:今までは部署ごとにツールを選んでいましたが、今はまず全て我々システム部に投げてくれ、と社内には頼んでいて。それぞれが連携しやすいかどうか等も見た上で、ツールを選ぶようにしています。まだ今は一部のプロジェクトのみでこのDX化を進めていますが、そのメンバーは皆、業務効率化や自動化ということを理解してきていて、意識がすごく変わってきていますね。プログラムを書ける人材を増やしていけば、自社内で対応できることも増えていくと思います。
“小売業界の視点”を知っているプリズマティクスが導入をサポート
逸見:EC周りは世の中と社内の進化に応じて継続的に手を入れ続けなければならないシステムなので、社内で分かっているチームがいないと改善速度が落ちてしまいます。その上で、プログラマーやエンジニアは外部人材に頼っても構わないし、APIで外の技術と繋いでも構わない。
村上:プリズマティクスの担当の方には本当にお世話になっていて、プリズマティクスのサポートがなかったら実現できなかったと思いますよ。御社のメンバーは、皆さん技術が本当に好きですよね。難しい課題があったら「休め」っていってもずっと考え続けていそうだなと思います(笑)。「この分野について何か疑問が出てきたときに気軽に聞ける」関係性であることはすごく重要だと思っていて、契約の時も重視している点の一つです。
逸見:「丸投げ」だったベンダーとの関係性が、「これについて聞きたい」「これについて教えてほしい」という双方向コミュニケーションに変化したからこそだと思います。そして、それこそが本当のDX、ビジネスの変革ということだと思います。どこからインプットされて、どこへアウトプットするのか現場の人間が理解するようになることが重要です。そこで初めて真剣に横の部署と話をするようになる(笑)。
プリズマティクスで開発技術支援をしているメンバーが“事業サイド側”にいた人間であるというのは、弊社の強みでもあります。業務フローまでちゃんと理解するよう努めてから、クライアントである事業者に対して、構成を提案することができる。まずはこちらから投げかけさせていただくというのが、大事なことだと思っています。
村上:1年前にシステムをリプレイスして、ある程度は数字の管理が出来るようになりました。これからは、ヒューマンエラーを防止し、在庫数から自動で発注タイミングを教えてあげられるような、現場の人を助けられるような仕組みを入れていけたら、と思っています。
逸見:仕様や要件定義まで踏み込んで、先々こうしてきたい、と考えている会社にとって『prismatix』はとても向いているプラットフォームですよね。会社全体のDXってITの仕組みを入れることだと思われがちですが、そうではありません。業務フローの中で、関係する部署のメンバーが課題を確認し合い、デジタルを取り入れて業務を変えて効率良くしながら、接客の時間を増やしたり、商品を考える時間のように数字がプラスになる業務時間を増やしましょう、ということなのだと思います。今回のリプレイスは、まさに御社の組織が変わっていくとても良いきっかけになったのではないかと感じました。今日は貴重なお話しを伺うことができ、ありがとうございました。
プリズマティクスアドバイザー 逸見 光次郎
三省堂書店店舗勤務、ソフトバンク・イー・コマースのちセブンネットショッピング立ち上げ、アマゾンジャパンBooksMD、イオンにてネットスーパー立ち上げとデジタルビジネス戦略担当、カメラのキタムラ執行役員EC事業部長としてオムニチャネル化推進を経て独立。株式会社CaTラボ代表 オムニチャネルコンサルタント。日本オムニチャネル協会理事、防音専門ピアリビング取締役等を兼務。店舗とネットを融合し、顧客満足を高める買い物の楽しさを追求し続けている。
- 会社情報
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会社名:アンファー株式会社
所在地:〒100-7026 東京都千代田区丸の内2-7-2 JPタワー26F
設立:1987年10月
従業員数:206名(2021年6月時点)
主な事業:化粧品、サプリメント、健康食品、専門医師監修によるクリニック専売品などのオリジナルエイジングケアプロダクツの研究開発及び製造・販売・卸業務