powered by

prismatix プリズマティクス

prisma Journal

お役立ち情報

2026.06.19 プリズマニュース #登壇レポート

トライアルから学ぶ!自前開発30年の結実。AIが変える「リアル店舗」の未来と流通DXの全貌

1992年のPOS自社開発以来、30年以上にわたりシステムの内製化を貫いてきた同社の歩みは、単なる効率化の域を超えています。250店舗で500万人が利用する「スキップカート」や無人決済店舗「トライアルGO」など、その技術力は今や店舗体験のスタンダードを塗り替えつつあります。
彼らが見据えるのは、自社の成功に留まらない「流通業界全体の最適化」です。本記事では、2025年10月開催のセミナー(※)より、同社が描く「100年持つITアーキテクチャ」の構想と、業界変革の最前線を凝縮してレポートします。

【古賀氏プロフィール】
在学中にプログラマーとしてトライアルでアルバイトする中、同社のビジョンに共感し入社。エンジニアリング会社であるTRE発足後、名古屋支店の立ち上げ、中国拠点の立ち上げに携わり、2005年TRE-China 烟台の総経理に就任。
帰国後は商品部、フォーマット事業部などを経て、店舗システム改革責任者としてオペレーションコスト半減や24時間無人店舗システム構築を推進。Retail AI グループにおいて経営に携わり、2023年6月よりトライアルのCDOに就任。

(※)プリズマティクスセミナー「JINS・トライアルの事例で学ぶ! EC / OMOの最前線~AI時代のリアル店舗の位置付けとITシステムの再考~」にて、株式会社トライアルカンパニー 執行役員 社長室デジタル戦略課 CDO 兼 システム本部 副本部長 古賀 輝幸氏をお迎えしたセッション内容にフォーカスしてご紹介します。

1.「デジタル中心の経営」を目指すトライアルのビジョンと自前開発の歴史

トライアルは「世界の誰もが豊かさを享受できる社会を作る」というパーパスと、「テクノロジーと人の経験知で世界のリアルコマースをアップデートする」というビジョンを掲げています。
同社の最大の特徴は、1992年に自らPOSシステムを開発したことに始まり、以来30年以上にわたりほぼ全ての基幹システムを内製・自前開発で構築・維持してきたことにあります。他社製品の導入を試みるたびに「うまくいかず自前に回帰」という経験を繰り返してきました。

同社が目指しているのは「デジタルを使いこなす」にとどまらない、「経営のあり方をデジタルの上に成り立つものへ根幹から変革する」ことです。
これは産業革命期において、蒸気動力を電気に置き換えるだけでは生産性が上がらず、電気の時代に合わせた工場の設計・ライン・人員配置まで変えて初めて飛躍的な生産性向上が実現したことと同様の考え方です。
流通業においても、紙と人手でできたプロセスをシステムに乗せるだけでは不十分であり、デジタル時代に応じた全く新しいプロセスへの切り替えが求められています。

2.コネクテッドストア—スキップカートが生み出す新たな購買体験

トライアルが開発した「スキップカート」は、カートにタブレットを取り付け、買い物しながら商品をスキャンし、レジ前のゲートを通過すると決済が完了するセミセルフレジ機能です。現在約250店舗・2万1,000台が稼働し、月間500万人に利用されています。20代から80代まで幅広い年齢層に使われており、「高齢者は使えないのでは」という懸念を覆しています。

高齢者を含む幅広い層が継続利用している理由は、最後のレジ決済が非常にスムーズであることです。財布からお金をジャラジャラ取り出す必要がなく、マイバックに入れた商品をそのまま持って帰れるという体験の質の高さが、リピート率の向上に直結しています。導入時には専門部隊が店頭でカードの案内や使い方のサポートを行い、初回のハードルを下げる工夫をしました。この結果、レジ待ち時間の短縮や来店頻度の向上など、複数のポジティブな数字が確認されています。

さらに店頭には各種カメラを設置し、陳列商品の種類・ボリューム・店舗コンディションを遠隔地からリアルタイムで確認できる環境を整えています。お客様の購買行動を映像で捉えながら「なぜ売れたのか、なぜ売れなかったのか」まで分析を進めています。

トライアルGO—完全無人化コンビニが描くローコスト運営の未来

「トライアルGO」はコンビニ規模の新業態店舗で、最新のデジタル技術を実装した実験店舗です。最大の特徴は全セルフレジ(有人レジなし)・顔認証決済・手ぶらでの買い物体験の実現で、年齢確認もシステムが自動で対応するため、従業員の常駐が不要な設計となっています。需要予測に基づく自動発注や、夕方の値下げ(見切り)も自動化しています。

社員は1人で5〜6店舗をカメラ越しに遠隔マネジメントするスタイルを採用しており、徹底的なローコストオペレーションを実現しています。商品面では生鮮ネタを使った寿司など、コンビニでは通常提供できないスーパーセンタークオリティの食材を高頻度で配送・提供しています。今後、西友との経営統合を機に東京エリアへの積極展開を計画しています。

3.リテールメディアマーケティング—1,200万会員データが拓くパーソナライズ施策

トライアルは1,200万人の会員を保有しており、売上に占める会員比率は80%超という驚異的な数字を誇ります。来店するお客様のほとんどが「どのような方で、どういった嗜好・ライフスタイルを持つか」を把握できている状態であり、このデータを軸にした高度な顧客理解と一人ひとりへのアプローチが可能です。

スキップカートや店内サイネージ、スマホアプリを組み合わせたリアルタイムのレコメンデーションも展開しています。例えば、野菜売り場でカット野菜をスキャンしたお客様に「ドレッシング切れていませんか?」と表示したり、食パンを購入したお客様に「新商品のジャムが出ました、ポイント10倍です」という案内をカート画面に出したりすることで、買い忘れ防止や追加購買を促しています。

店内には1店舗あたり100台規模のサイネージを設置しています。1つの商品を大きく訴求すると店内全てのサイネージがその画面に切り替わり、店内放送も連動する仕組みにより、商品の印象付けと非計画購買(衝動買い)を効果的に促しています。例えば惣菜のできたて告知を流すと、遠くの通路からも来店客が集まり、やっている店とやっていない店で売上が2倍近く変わるケースもあります。これらのデータは自社開発の「MDリンク」というIDポスデータ分析システムで管理されており、270社の卸・メーカーへの開放もしています。

オペレーショナルバックボーン——100年持つアーキテクチャへの基盤刷新

トライアルが現在進めている基幹システムの再構築は「マイクロサービスアーキテクチャ」を採用し、疎結合・可観測性によって「100年持つアーキテクチャ」を目指しています。リアルタイムデータ処理を前提とした設計で、300店舗以上のPOSで会計が入るたびにレシート単位のデータが基幹システムに流れ込み、売上・在庫がリアルタイムで集計されます。これが完成すれば、年・月・週・時間単位で計画と実績のギャップをAIエージェントが検知し、要因分析を行い、現場のアクションを促すサイクルが全社的に機能します。

将来的には「デジタルツイン」レベルのデータ精度を確保し、コンピューター上で店舗の状態を忠実に再現することが目標です。例えばクリスマス商品を11月後半から出すか12月から出すかによって売上がどう変わるかをシミュレーションできる世界観を描いています。この基盤刷新はあと1〜2年で大部分の完了を見込んでいます。

4.デジタルバリューチェーン—宮若ウィークが牽引する業界横断DX

トライアルは小売業だけのDXでは限界があり、卸・メーカーを含む流通全体のバリューチェーンをデジタルでつなぐことが真の生産性向上につながると考えています。現在の流通業は約23〜40兆円規模の「無駄・無理・ムラ」が存在するとし、システムの力でここを最適化することを使命としています。

その実践の場として、福岡の宮若市に廃校(旧吉川小学校)をリノベーションした「リテールAI開発センター MUSUBU AI」を設置し、毎月「宮若ウィーク」を開催しています。現在48社・305名のメーカー担当者が東京から宮若市に集まり、顧客理解ワークショップ・IDポスデータ分析のワークショップ・自動棚割り・プライシングの研究を共同で行っています。この場でしか公開されていないデータを用いた実験も実施されています。
コンサインメント形式でメーカー・卸との協業も段階的に進めており、カテゴリー設計→品揃え選択→在庫コントロール→プライシング決定と、データ共有と意思決定の範囲を広げていく計画です。最終的には流通プラットフォームとして、多くの小売・卸・メーカーがデータを共有できる基盤を提供することを構想しています。隣接地のスーパーセンターは最新技術の実証実験の場としても機能しており、宮全体がテストベッドとなっています。

5.まとめ

今回は、プリズマティクスセミナー「JINS・トライアルの事例で学ぶ! EC / OMOの最前線~AI時代のリアル店舗の位置付けとITシステムの再考~」にて、「スマートストアをはじめとする買い物体験と流通の革新」というセッションタイトルで古賀氏にご登壇いただいた内容を紹介しました。

プリズマティクスは、SaaS/PaaSの『fannaly』をベースに、ポイント、クーポン、顧客基盤、認証基盤、ECサイト、モバイルオーダー、スマホレジ、など様々な接点を繋ぐコンサルティング、プラットフォーム、導入・開発を提供し、顧客体験の進化を伴走します。お気軽にお問い合わせください。

プリズマ編集部

「the engagement commerce platform for wow! experiences」をコンセプトに、小売業における顧客エンゲージメント向上の支援、戦略的OMOを実現するプラットフォーム提供を行うプリズマティクス株式会社が運営する、オウンドメディア『プリズマジャーナル』編集部。

『プリズマジャーナル』では、プリズマティクスで活躍するコンサルタントが執筆するコラム「徒然ジャーナル」、業界の先端を走り続けるプリズマティクスアドバイザーからの寄稿文など、小売業の皆様に向けて伝えたいこと、耳寄りな情報などをお送りします。

Contact お問い合わせ

機能や費用詳細は「資料請求はこちら」から確認できます。
導入に関するご相談は「お問い合わせ」から、お気軽にお問い合わせください。

プリズマティクス発信オウンドメディアです。小売の未来につなげる知見・お役立ち情報を配信しています。

お問い合わせは
こちら